>>男子部試合情報
(早稲田スポーツ新聞会提供 記事 榎本透子、写真 大森葵、下長根沙羅)
この瞬間を、待っていた。歓喜に湧く応援席。駆け寄る選手たちは笑顔、涙、それぞれの喜びを爆発させる。伝統の早慶定期戦。ことし、男子は90回という節目の年を迎えた。試合は終始早大ペースで進む。慶大の戦略を徹底的に分析し、攻撃の芽を摘み取る。さらに後列から攻めの起点をつくる、これまでの早大が使うことのなかった秘策を投じた。前後半でそれぞれ3点を奪取し、失点は0。「作戦が功を奏した」と宮崎主将は圧勝の試合に満足げな表情を浮かべた。
試合はいきなり動きをみせる。開始早々、DF斎藤湧大(スポ1=栃木・今市)のボールにFW関修平(商2=東京・早大学院)が合わせ、先制点を獲得。喜びを全身で表したパフォーマンスで会場を盛り上げた。直後には課題の1つであるペナルティコーナー(PC)から再び関が得点を奪う。開始10分以内に2得点を挙げた早大。勢いが加速した。19分にはFW今村光成(商1=東京・早大学院)のアシストからMF宮口和樹(スポ3=滋賀・伊吹)がゴールへ押し込み、得点をさらに伸ばす。負けられない慶大は前半、2度のPCで反撃チャンスを得るが、早大守備陣に阻まれ失敗。3-0で試合を折り返す。
勝負の後半、1度手にした勢いが衰えることはなかった。開始5分でこの試合4度目のPCを獲得すると、宮崎の一撃で点を加算。しかし直後の後半7分、慶大にペナルティストローク(PS)を許し、この試合最大の危機を迎える。「止めてくれ」、観客席の祈る声が飛ぶ中、GK戸田翼(スポ4=滋賀・伊吹)はシュートを冷静に弾く。守護神として早大のゴールを守り続けてきた4年生の神髄を見せた。12分には宮崎が再びPCからの点を取り、慶大を一気に突き放す。その後も相手にPCを許すなど幾度となく危機を迎えるが、DF陣が一枚上手の守備を展開し、無失点を貫いた。終了間際に宮口が中盤から抜け出し、宮崎につなぐ。主砲の宮崎が放つ鋭いシュートが、きょうの試合を物語った。終了のブザーとともに弾ける喜び。西日が差し込む東伏見に『紺碧の空』が響き渡った。
得点力に欠け、後半に弱い――新体制となってから抱える課題に苦しめられた早大ホッケー部の努力が、ようやく花開いた瞬間だった。リーグ戦とは異なるこの試合は、早慶両チームの選手たちにとって特別な意味を持つ。宮崎は「早慶戦は何としてでも勝ちたい」と語気を強めた。例年ならばこの一戦を最後に4年生は引退だが、ことしは全日本学生選手権(インカレ)が控えている。いざ、最後の戦いへ。今試合の自信と勢いを携え、早大は全国の強豪に挑む。